35年前の未解決事件の記事を書く事になった新聞記者は、京都に住むある男と出会い、事件の脅迫テープに声を使われた子供たちのその後の人生を探っていく。

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作品情報

制作国:日本

上映時間:142分

ジャンル:サスペンス・ドラマ

監督:土井裕泰

脚本:野木亜紀子

原作:塩田武士『罪の声』

キャスト:小栗旬、星野源、松重豊、宇野祥平、古舘寛治、市川実日子、火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子

あらすじ

新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は昭和最大の未解決事件の真相を追う事に。

一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は父の遺品の中から小さい頃の自分の声が録音されたカセットテープを見つける。それは未解決事件で使用された脅迫テープの音声だった。

事件の真相を追っていくうちに二人は出会い、真実を共に探し始める。

原作と背景

実際にあった昭和最大の未解決事件・グリコ森永事件をモチーフにしたフィクション作品です。本作品内で事件は「ギンガ・萬堂事件」として描かれます。

グリコ・森永事件とは

1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に、大阪府・兵庫県を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。

2000年(平成12年)2月13日に愛知青酸入り菓子ばら撒き事件の殺人未遂罪が時効を迎え、すべての事件の公訴時効が成立してこの事件は完全犯罪となり、警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。

Wikipedia

原作は塩田武士のサスペンス小説『罪の声』(つみのこえ)。

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ネタバレ有りの解説

罪の声とは

脅迫する際に送り付けられたカセットテープに録音されていた音声=犯罪に使用された声、の人物のその後を描いていることから”罪の声”というタイトルになっています。

子供たちのその後は

話が進むにつれて、犯人グループの人物像が明らかになっていきます。

2億円手に入るという口車に乗せられて犯罪に加担した犯人グループのメンバーたち。しかし目的は身代金ではなく株価の操作によって利益を得ることだったため、思っていた程の報酬が手に入らず次第に仲間割れが起きます。

ある日グループ内で殺人が起き、被害者生島の残された一家は夜逃げし、加害者の青木組の下で隠れて暮らすことを強いられます。監視された生活から逃げようとした姉は事故死に見せかけて殺害され、一人逃げ出すも35年経った今も青木組の影に怯えて暮らす生島聡一郎(宇野翔平)自死を考えるほど追い詰められた暮らしをしていました。

一方で犯人グループの主犯格の男の甥であることが明らかになった曽根俊也(星野源)は、テープを発見するまで事件のことは知らされず生きてきた。何も知らないまま大人になり、妻がいて、子供がいて、家庭を築いて慎ましく幸せに暮らしてきました。

学生運動とは、正義とは

犯行の動機について、曽根達雄は”ロンドンの事件を模倣して日本で株を使って儲けを出したい、という話を持ちかけられた”ことをきっかけに、”学生運動の延長”として犯行に及んだと述べています。

社会に対する怒り、正義を振りかざした。そこに子供の声を使って彼らの将来がどうなるか、考えが及ばなかった、と。

日本は彼の望む国になったわけでもなく、彼の時は1984年から止まったまま。それを彼と長年交流のある女性はFossil(化石)と揶揄しました。

マスコミの報道のあり方とは

阿久津英士(小栗旬)は社会部から文化部へ異動した経歴を持ちます。なぜ過去を掘り起こし真実を明らかにしなくてはならないのか。世の中に何を訴えればいいのか思い悩んだ時期がありました。

その答えは無事、物語の終盤に見つけることができます。真実を明らかにしたからこそ救われた人がいた。

生島聡一郎はその一人です。時効が成立し、かつて同じ境遇にいた曽根俊也が幸せに暮らしていることを知って自死を思いとどまりました。後に35年前に青木組の元に置き去りにしてしまった母との再会を果たし、亡き姉の声を再び聞くことができたのは、彼らが真実を明らかにしたからです。

感想

あの人に注目!

小栗旬さんと星野源さんの共演が話題を呼んだ本作ですが、特に注目していただきたいのが名脇役、生島聡一郎役の宇野翔平さんです。

青木組から逃げるように生活し、自分は犯罪に加担していたのだと罪悪感を背負い生きてきた35年という重く暗い月日を、暗い部屋で座り込む姿で表現してみせたカットに脱帽です。

服装にもそれぞれの生活が表れていた点も見どころです。

星野源さんはテーラー役なのでサイズの合った流行り廃りのないスタンダードな3ピースのスーツ。小栗旬さんは時間に追われた記者らしく既製品のよれよれのスーツ。宇野さんは景色に溶け込みやすい配色の服に汚れたスニーカー。細かい演出にこだわっている点も見応えがあります。

まとめ

本作はよくあるサスペンスのような、事件が起きる→犯人逮捕のような展開ではありません。そしてとても長いです。2時間超えです。しかし中弛みすることもなく、最後までテンポ良く話が進み事件の真相が明らかになっていきます。

話しの盛り上がりに欠ける、と感じる方もいるかもしれませんが、日本の俳優陣の演技力と、実際にあった事件を元にしているという骨のある脚本が見どころの素晴らしい作品です。

ではまた。